最近、「積み立てNISA」や「iDeCo」っていう言葉をよく耳にするようになったし、そろそろ僕(私)も資産運用を始めようかな!?でも投資ってリスクがあるって聞くしなー。そもそも投資のリスクってどういうことだ?最低限の知識を抑えてから始めたい。
資産運用を実践していく上でリスクはつきものです。自分の目的にあった賢い投資を行うためには最低限の知識が必要となります。その中でも『リスク』と『期待リターン』は絶対に抑えておきたい用語のひとつです。はたして、金融の世界において「リスク」という言葉はどんな意味で使われているのでしょうか。
今回は、投資における『リスク』と『期待リターン』という言葉について解説していきます。
【読者さんへの前置きメッセージ】
本記事は、「これから資産運用を始めたいけど右も左も分からないよ。最低限の知識は身につけてから投資を始めるか検討したい。」という方や、「既に投資を始めてはいるものの、お金に関してもっと知識を深めていきたいよ。」という方に向けて書いています。
この記事を読むことで、リスクと期待リターンという言葉を知ることができ、自分のリスク許容度や投資目的に合った金融商品を選ぶことが可能になります!
※長期投資で資産運用をするということが前提の記事です。
目次
投資の世界で使われるリスクという言葉の意味
リスクという言葉は、一般的には「危険」であったり「危険度」といったようなネガティブな意味で使われています。日常生活の中でも「リスクを避けろ」というような言い回しがよく用いられます。
しかし、金融の世界ではリスクの定義がこれとは少し違います。必ずしも「危険度」ということのみを表す言葉ではないということです。
リスクとは、将来の結果の不確実さのこと
言い換えるならば、リスクとは、リターンの変動幅の大きさ(ブレ)のことです。
その変動幅が大きいことを「リスクが高い」「ボラティリティが高い」、変動幅が小さいことを「リスクが低い」「ボラティリティが低い」と言います。つまり、リスクとリターンは比例するのです。ローリスクローリタン、ハイリスクハイリターンとはそのことです(この件に関して、以下の「参考」で深堀しています)。
金融商品価格の変動の仕方は、振り子の揺れ動きと同じようなものです。「右方向(プラス側)だけには大きく揺れるけど、左方向(マイナス側)にはほとんど揺れない」ということはなく、左右に同じ大きさだけ動くということです。
すなわち、高いリターンを期待できる商品は、同時にそれと同程度のマイナスを被る可能性と表裏一体であるということも示唆しているということです。逆もしかりで、損をする可能性は低いけど大きなリターンを期待できる商品は、ひとつの例外を除いては存在しません(その例外については、本記事で説明します)。
金融商品のリスク(将来の不確実性)は数字で確実に表すことができる!
お金の世界におけるリスクという概念は、数字で表すことができます。
あらゆる金融商品は、過去のデータさえあれば、統計学という手法を使って確率論的に計算することができるということです。どういうことかというと、リスク(リターンの揺れ幅)は、統計学的には標準偏差(平均からのばらつき度合い)という数値で表すことができるということです。
たとえば、リスク(標準偏差)が10%の金融商品ならば、1年後に平均値から̟±10%の範囲に68.3%の確率で収まります。範囲を広げていくと、もっと高い確率で価格を予測できます。上記の例の場合ですと、±20の範囲に95.5%の確率で収まり、±30%の範囲には99.7%の確率で収まります。
念のため、もうひとつ例を示しておきます。
リスクが5%の金融商品なら、平均値から±5%の範囲に68.3%、±10%の範囲に95.5%、±15%の範囲に99.7%と考えるということです。
では、この平均値とは何のことを示しているのでしょうか?
期待リターンも数字で表すことができる
先ほどのリスクの説明ででてきた「平均値」にあたる基準点が『期待リターン』です。
期待リターンとは、その金融商品に投資した場合に、1年後に実現できる可能性が最も高いと推測されるリターンのことです。
たとえば、期待リターンが3%の金融商品に投資した場合、1年後に103万円になっている可能性が最も高いと考えます。
では、期待リターンはどのように計算していくのでしょうか?
実は、期待リターンは、先ほどのリスクのように過去のデータのみで単純に計算できるものではなく、投資先のインフレ率や経済成長率などの将来の経済的な見通しや、株式市場の色々な理屈までをも勘案して推測されます。この複雑な推測を個人投資家が行うのは難しいですから、通常は金融のプロの予測を参照します。
金融のプロの予測として、ここでは、日本の公的年金を運用しているGPIFの見込みを見てみましょう。
表1. GPIFの試算による各資産クラスの期待リターンとリスク
期待リターン (年率平均) | リスク (標準偏差) | |
国内債券 | +2.0% | ±4.7% |
海外債券 | +3.5% | ±12.6% |
国内株式 | +5.2% | ±25.1% |
海外株式 | +6.2% | ±27.3% |
出典:GPIF「年金積立金管理運用独立行政法人の中期計画(基本ポートフォリオ)の変更
こちらの数値を参照して具体的な数値を使って説明します。
たとえば、海外株式に、100万円を投資した場合、1年後に、772,074円~1,351,926円(106.2万円±27.3%)の範囲に68.3%、482,148円~1,641,852円(106.2万円±54.6%)の範囲に95.5%、192,222円~1,931,778円(106.2万円±81.9%)の範囲に99.7%、の確率で収まるといった感じです。
期待リターンを維持したままリスクだけを下げる方法がある
リスク(値動きのばらつきの幅)が大きいと、大きく値上がりすることが期待できる反面、同時に大きく値下がる可能性を受け入れなければなりません。あくまでリスクとは、プラス側にもマイナス側にもそのパーセント分だけ揺れ動くということだからです。
表1の内容からお分かりいただけるように、一般的に期待リターンが高い投資先はリスクも高くなるという傾向があります。堅実に資産運用を行いたい投資家にとっての理想は、儲かる可能性は維持しつつ安全に運用を行うことだと思います。
そんな都合のいい方法なんてあるんですか?
その方法とは分散効果です
分散効果を活用すると、期待リターンは維持したまま、リスクだけを下げることができます。
分散効果とは、値動きの異なる投資対象を複数組み合わせることで、リスクを下げることができる効果のことです。異なる値動きが相殺されて、トータルでの値動きの幅がマイルドになるといった具合です。
複数の銘柄を組み合わせておくことにより、どこかに危機が発生したとしても、別の銘柄がその危機をカバーしてくれるため、期待リターンは変えずにリスクだけを下げることができるということです。
これを実現するためには、幅広い性質の銘柄に分散させておく必要があります。
なるほど。でも、株って1株買うだけで何万円もするって聞きますよ。それを何十・何百株も買うのなんてできないよ。
分散効果による期待リターンとリスクの具体例
主要な投資信託(インデックスファンド)の期待リターンとリスクを以下にお示しします。
表2. 主要な投資信託の期待リターンとリスク
期待リターン | リスク | |
S&P500 (米国株式) | +9.6% | ±18.1% |
NASDAQ100 (米国株式) | +17.1% | ±26.6% |
TOPIX (日本国株式) | +2.0% | ±18.0% |
先ほどの米国株式(期待リターン+6.2%、リスク±27.3%)と、分散効果が効いているS&P500(期待リターン+9.2%、リスク±18.1%)を比較すると一目瞭然ですね。分散すればするほど、リスクが下げられるということです!
まとめ
① 投資におけるリスクとは、将来の結果の不確実さの程度を表す指標
② 期待リターンとリスクは数字で表されている
③ 分散効果で期待リターンを維持したままリスクだけを下げられる